適応障害とうつ病

日々の診察場面に於いて、「適応障害」と「うつ病」との鑑別が必要になる場面が多くあります。

適応障害は、明らかなストレス(職場の人間関係が最多)が原因となり、気分の落ち込み、意欲の低下、眠れないといった症状に加え、動悸や嗚咽、頭痛、めまいなどの身体症状を呈している状態であり、特に当院のような街中のクリニックでは最も遭遇する機会の多い疾患です。

ストレスが原因となっているので、それを小さくする、距離をとることで速やかな改善が期待できます。

我々がよく使用する診断基準(DSM−5)では「ストレス発生から3ヶ月以内に症状が出現し、ストレス消失から6ヶ月以内に改善する」となっています。

そのため治療方法としては、例えば職場が原因となっているなら休職を勧めるなどの環境調整が最も重要となってきます。

不眠や不安に対して、睡眠薬や安定剤を一時的に処方することはありますが、あくまで対症療法となります。しかし、症状によっては非常に有効なことがあります。

一方でうつ病は、気分の落ち込みや意欲低下に加え、趣味を全く楽しめない、休日も何もする気が起きないといった症状が、ほぼ一日中、ほぼ毎日続く疾患です。希死念慮により、自殺企図に至る場合もあります。

セロトニン欠乏という脳内の変化が生じているため、SSRIやSNRIといった抗うつ薬を長期間服用する必要があることが多く、治療面でも適応障害とは大きく異なっています。

そういった意味では、適応障害が「こころの風邪」なら、うつ病は「こころの肺炎」といえるでしょう。

風邪をこじらせて肺炎になることがあるように、適応障害も適切な治療をせず放置しておくとうつ病になる可能性があります。

どの疾患にも言えることですが、適応障害もうつ病も早期の受診や診断、治療が重要となります。

こころや身体の異変を感じられたら早めにご来院ください。